「どうしても、そばにいてやりたいと思う生徒がいた。それは、教師としての気持ちだけなんだけど」
「その後、連絡は取ってないんですか?」
喜多先生は、静かに頷いた。
「手紙が1度来たけど、元気そうだった」
「喜多先生に救われた生徒は、他にもたくさんいると思いますよ」
喜多先生は、目を細くして笑いながら、首を横に振る。
「新垣先生にそんなこと言われると照れるよ。はは。しかし、離任式は辛かった。生徒に泣かれると、やっぱり辛いよな」
喜多先生が離れたくないと思った生徒ってどんな生徒なんだろう。
「その子は、きっと幸せになっているんでしょうね」
喜多先生は、照れ臭そうに微笑んで腕組みをした。