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「今日は人少ないからお点前の練習三回ずつやろっか!」
部長さんの、実玖先輩がパンと手をたたいて言った。
実玖先輩は、一個上の学年では、可愛くて有名らしい。
それに、勉強も学年10番に入る出来、
なんで運動部に入らなかったのか不思議なくらい運動もできる。
カミサマとか、信じないけど、
もしカミサマがいるのなら、不公平だよね。
よく、小説とか漫画とかでも書いてあるけど、
ほんとに、不公平だなって思う。
お点前をしてる最中は、そんなこと考えてないけどね。
なんとなく茶道部に入ったけど、茶道は好きだ。
特に、ふくさを開く瞬間が好き。
パンッて、きれいな音が鳴るとうれしい。
「結衣ちゃん、一番右で、最初にやる?」
「はい!」
和室にクーラーをかけて茶道をするより、
暑い中で、扉を前回にして、熱いお茶を飲みたい。
すごくどうでもいいけど、結構大事。
私には取り柄とか、得意なこととか、人に自慢できることとか、ないけど、
茶道部になんとなく入って、ちょっとした楽しみとか、見つけられるようになって。
好きな人もできたし、好きなことも見つけられた。
ため息が出ちゃうこともあるけど、うん。
まあ、それはそれ、これはこれ、だよね?…


