腹黒王子と意地っぱりガールの場合。

「ダメだあ。なかなか見つかんないや~」

「あー」

「なんかもうコレ、ここにある気しなくない? ふつーに生徒会室にあったりして」



一旦戻ろ戻ろ、と言って、彼女は出入口のドアに向きかけた。



「………」



けれどもオレは、一瞬の思案の後。

あかり、と、彼女の名前を呼んで引き留めた。



「なに──ッ?!」



こちらに背を向けかけた彼女の手首を掴んで、そのまま引き寄せる。

それから少しだけ乱暴に、だけども最低限の痛みで済むことを心掛けて、彼女の肩を棚に押しつけた。



「……試して、みる?」



至近距離でささやいて、微笑むオレに。

呆然とした顔のあかりは、けれどもすぐに、キッとこちらを睨みつけてきた。



「あ、あんた、何言って……っ」

「話を振ってきたのはあかりだろ。自業自得、自分で蒔いた種」

「そっ、そんなの、」

「キョーミ、あんだろ? キスの味、ってやつに」

「……ッ、」



にやりと笑いながらそう言って頬を撫でると、ピクン、とあかりは反応を示した。

頬を紅潮させ、涙目でこちらを睨んでも男からするとまったく痛くもかゆくもない、むしろ煽るだけだということは、恋愛経験値激低の彼女には知りえないことなのだろう。

ついつい緩む口元を抑えきれないまま、そんな彼女を見下ろす。