「わぁ……!」



屋上の扉を開けると、秋らしい涼しい風が髪をなびかせた。



「あたし、屋上って初めて!」

「オレはしょっちゅう来てるけどな」

「……バーカ」



隼人に手を引かれて進み、ふたりで手すりに寄り掛かる。

すると、どこからかチャイムの音が聞こえてきた。



「あ、本鈴……」

「いーじゃん、どーせ自習だし」



そこでつながっていた手がするりと離れて、代わりに隼人がごろんとコンクリートの上に寝転がる。

あたしはぬくもりがなくなった手をなんとなく見つめて、それから隼人の横に腰掛けた。


空を見上げると薄い青が広がっていて、飛行機雲がその青を切り裂いている。

ぽかぽかした日差しにぐ、と伸びをしてから、横で寝転がる隼人を見た。

手を頭の下に組んで目を閉じるそいつは、本当に寝ているのか胸が規則正しく上下している。


……だからあたしは、ほんとに、……ほんの少しだけ、素直になることにした。



「……ありがと」

「何が?」



寝ていると思っていた相手から思いがけず声が返ってきて、少し驚いたけれど。



「……なーんでもないっ」



少しだけ笑みを浮かべながらそう言って、あたしはまた立ち上がった。


……素直じゃないあたしへの、素直じゃない優しさに。

ちょっとだけ、気が付いたから。



「……パンツが見え、」

「踏むぞ。」







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