「このこと翔樹は知ってるのか?」
遊人の声が段々低くなっていく。
答えを返す訳にもいかなく、視線を地面に落した。
「・・・・・・知らない、んだな」
どう接していいのか分からず、目を伏せた。
こんな筈じゃなかった。
2人には黙ってこの街を出て行くつもりだった。
どうして私はこの道を選んだのだろう。
「帰るぞ」
「・・・・・っ・・・・」
腕を引かれて来た道を戻って行く。
「すいません、今日は早退させて頂きます」
遊人が職場にそう挨拶している時に気付く。
勤務中だったんだ・・・・、と。
そして少し力の籠った手に引かれ、もう2度と帰らないと誓った家に向かって帰ったのだった。


