卑怯な私



「最近調子はどうですか?」



病院に検査を受けに来ると、何時もと同じ質問を受ける。



今日は2人に黙って検査を受けにきた。



「声が、戻ったんです」



私の声を聞いて驚いている先生。



今朝、翔樹を送る時に喉に違和感を感じた。



その時は黙って見送ったが、翔樹が出てしばらくリビングで試しに声を出してみた。



案の定、声が戻っていたんだ。



突然出たことに自分でも驚いた。



それでも、喜びが沸き起こることはなかったんだ。



心の何処かで私に声が戻ってしまったら翔樹が離れていくと思っているから。







「優子、今日はハンバーグだぞ。挽肉が安かったんだ」



仕事が終わり、スーパーで買って来た食材をしまいながら今日のメニューを教えてくれた。



「直ぐ作るからちょっと待ってろよ」



私に声が戻ったことは担当医の先生との秘密にしてもらった。



検査は念のため来月も受けることにして。



私はそのことを翔樹に言わず内職を進めた。