「いえ、大丈夫ですよ。」
もっと待たせて良かったんですよなんて言えるはずもなく、日菜はあははと薄ら笑い。
(あぁ一対一で会話するの初めてだ・・・帰りたい・・・)
「とりあえず、あっち行こ。」
拓海は柔らかく微笑むと、自動販売機の裏にある茶色いベンチを指差す。
日菜は小さく頷きゆっくりとした足取りでベンチまで歩いた。
はじめに拓海が座り、日菜は続いて拓海の右側に30センチほど間をとって座る。
日菜の視界には走っている車、車、車、点滅する信号、青色の自動販売機、自分の脚、そして拓海の右脚が映った。
ジリッジリッジリッ・・・
リーンリーーン・・・
夏の始まりを伝える虫達の鳴き声。
微かに香る独特な草木の匂い。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
そして謎の沈黙。
