会場へ戻ると、キャンプファイヤーの火は既に大きく燃えたぎっていて。
生徒たちはそれぞれに…盛り上がっていた。
「…あ。おかえり、小夏。」
「ただいま。」
アキラと千波ちゃんが…笑顔で私を迎えてくれた。
「……………。」
由良の姿は…、ナイ。
「さっき由良戻って来たで。小夏会えたん?」
「ううん~、会えんかった。なんや、戻っとったんか。」
「神妙な面持ちでな。香澄ちゃん連れてまたどっかに消えおったわ。」
「……そっか。」
「それから、阪本くんが…小夏んとこ探しとったけど。」
「……うん。」
「知ってる?小夏。」
「ん?」
「このイベントでな、毎年…何組かカップルができるねんて。」
「………へぇ…。」
「今年はなんや波乱がありそうやなぁ…。」
「………。どうやろな…。……アキラ、ほんなら悪いけど私…」
「阪本くんとこ、行くんやろ?」
「ん。」
「多分その辺にいてると思うで。」
「ん、わかった。そしたら…行ってくるわ。」
「はいは~い。」
アキラの言う通り、阪本くんはすぐ近くの男子の輪の中におって。しゃがみこんで…何やらワイワイとじゃれ合っていた。
とてもじゃないけど……
声を掛けられる状況にはなかった。
考えといて言われたけど…、そんなん深い意味などなかったんかもしれんし、
「……仕方ないやん。」
違うことを…由良を優先させた私が悪かったんやから。
由良がくれたチャンスを…無駄にしてもーたな。
くるり、と背を向けて、歩き出そうとした瞬間……、
「……日向さん?」
不意に……、手を掴まれ、呼び止められる。
「さっき…探したけどおらんかったから…。」
「…………。……ご、ごめん。…えーと、あの……、手。」
「……うわっ…、ごめん、つい!」
阪本くんは慌てて…掴んでいた手を離す。
阪本くんと一緒にいた男子グループが…一斉に冷やかしの声を上げた。
「…ちょ…、おまえらうるさ…」
………。
慌てとる阪本くん、貴重やな……。


