「……。びっくり。簡単に捕まえてもうた。」
「ホンマかいな…。」
「ホンマや、見てみい?」
小さな覗き穴を作って、先に…覗いて見る。
「………綺麗やなあ…。」
「こら、早う見せろや。」
由良が腕を引っ張って。
私は強制的に…ベンチに座らされる。
「……うお~……、ヤバいなあ、確かに。」
蛍の光が、小さく由良の顔を映し出す。
少年みたいに…屈託ない笑顔。
元々顔立ちはええねんな。
夏の夜だから……気分がハイになっとるんかな。
……奴が…
綺麗に見えるわ。
「「………………。」」
あれ………?
おかしない?この、シチュエーション。
真っ暗な夏の夜。
二人きりでベンチに肩を並べる……男と女。
しかも。
手……、握られとるし。
(蛍を見てたからだけど。)
「…………。由良…。」
「ん?」
「何でこっち見てんの?」
「…………。…いや、何か頭おかしなってるんかな。お前が妙にかわいく見えてん。」
「…………!」
「蛍マジックやな。」
「………そやな…。」
なんや、アンタもそんな変な風に感じとったんか。
妙なトコ、気ィ合うなあ……?
私がそっと手を開くと。
蛍はまた……夜空へと飛び立つ。
「………由良。」
「ん~?」
「早う香澄ちゃんとこ行ってやり?」
「……うん。わかっとる。」
「……仲直りせえよ?私も今度から…気ぃつけるし。アンタが誤解受けないようにな。」
「………。今更…、何を気をつけんの?」
「……こうしてな、2人きりになるのは…マズイと思うんよ。」
「……思わん。」
「所詮オスとメスやで。いくらトモダチですー言うたって、通じない人もおんねん。」
「………。」
「私な、アンタと一緒におるの案外楽しかったで?」
「…………。」
「おかげでトモダチもできたしな。」
「…………。……何の…前置き?」
「せやから…、『由良離れ』。」
「……なんじゃそりゃ…。」
「余りにも、近くにおるから…お互いに、アカンねん。」
「…………。」


