「………どこ行っとるんやろ…?」
手始めに、昼間訪れた炊飯場へと…やって来る。
「……おらんな。」
次は………、
トイレや休憩場として利用した施設の中を…探し回る。
「…………。え、偉い静かやなあ…。宿泊客はおらんのか。」
ひた、
ひた………
自分の足音だけが…
返ってくる。
「こんな所にひとりでおったら…違うのに連れてかれるわ!」
耐え切れなくなって……
退去。
「え~……、何か怖なってきたやん。」
外へ出ると。
ぽつんとひとつだけついてる街灯に……
大きな蛾や、奇妙な虫が集まっていた。
「…………。……あかん……、無理や。」
歩く先は…真っ暗。
懐中電灯でも借りてくるべきだったと……
既に、後悔し始めていた。
『日向に関係ないやろ』
頭の中で…由良の言葉が駆け巡る。
「………。せやなぁ…、ウチには全く関係ないねん。」
確かに、あいつの恋に私は関係あらへんねん。
けどな、あんたは…ちゃうかったろ?
今日この日だって、ずっと…応援してくれとったやん、私の…恋を。
だから、せめてもの…恩返しや。
香澄ちゃんの誤解を解かんと、スッキリせえへんやん。
楽しくいこーて、言うたしな。
それだけや。
「由良~……。………ゆ~らぁ~………。」
途端に。
ぽんっ、と…、
肩に何かが触れる。
「ひぃいっ……!!!」
「……お前は…幽霊か!何やねん、人の名前連呼しよって。」
「ゆ……、由良……。脅かさんといてや…。」
「こっちの方がびっくりやで。街灯の下に女のユーレイが一人うろうろと……。そしたら、お前やん。何しとったん?」
「………。アンタを探しとってん。」
「はあ?」
「アンタこそ、彼女と喧嘩したくらいでどこでいじけとったんよ!」
「……は?いじける?」
「せやから、香澄ちゃんと喧嘩してからアンタ姿消しとったやろ。」
「…………。」


