この日の授業は…バスケ。
男子がビブスを着て試合するのをぼんやりと眺めながら……、
私は夢見心地であった。
「ええなあ…、やっぱり。」
さっきの…阪本くんの笑顔を思い浮かべては、ほわわんと…幸せに浸る。
「……日向さん、見てみ、由良くんバスケ上手いやん。」
「え?ゆらぁ~?………そうや、由良のおかげやんなあ、アキラとは話せるようになったし、サカモトに出会えるし…。」
「…アカン、全く見とらんやろ。ちょっと…、大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫やね~んっ!」
バシバシっと…アキラの背中を…叩く。
視界には、ぼんやりと映りこむ…由良の姿。
「ホンマあの子はちょろちょろしとるなぁ。おカンは心配やで。」
「私は日向さんが心配やし。」
「いややわ、小夏って呼んで☆」
いよいよ自分でも訳わからんよーになった時…、
「……日向ッ!!」
コートの中から…誰かの叫びが聞こえた。
「…え、」…と言うのが先か、ほぼ同時に……
顔面に、激痛が走る。
ぽて、ぽて、と…勢いをなくしたバスケットボールが転がって。
放心する私の鼻からは…
生暖かいものがしたたり落ちる。
「…………?」
腕でそれを拭ってみると。
「…………?!」
腕が…真っ赤に染められている。
「………血……、血や……!!」
半パニックになった私の元に、真っ先に駆け付けてきたのは………、由良。
「…ごめん、大丈夫かっ。」
「……えーよ、大丈夫。ちょっと保健室に行ってくるわ。」
「ちょい待て。血ぃ止まっとらんやないか。」
奴は迷いなく私の眉間近くを摘んで。
「…ちょっ…、誰かティッシュ持ってる奴おらん?」
周りへと…必死に呼び掛ける。
女子の一人がポケットティッシュを差し出すと。
由良は一枚を私に手渡して、「ちょいこれで抑えてて。」と指示して、それから…、もう一枚を手際よく裂いて、くるくると巻くと……
「…ごめん。」
血のついたティッシュを私の手から奪い、すかさず鼻の穴へと…ダンボを突っ込んだ。
「………。由良、手ェ汚れてるで。」
「別にかまへん。ちゅーか、もっと他に気にすることあるやろ。」
「………?」


