「午後の体育ってキツイな。」
「そやねぇ、けど体育してる時の日向さんて、おもろくて眠気も覚めるねん。ウチ、人間観察が趣味やねんなあ?なんでもまきまきとしちょるから、凄いなぁって。」
「………。それ、誉めとんの?」
「そや、ウチの『おもろい』は最上級の誉め言葉やで。」
「………。ほな、アリガトー。」
午後の体育。
体育館を軽く走って、ウチらは…出口を出たすぐそこの水場へと来ていた。
「あっついわ~!」
私は蛇口を捻り、水を出すと……、両手でばしゃばしゃと顔を洗った。
「……。ワイルドやなぁ…。」
アキラはやっぱり笑っている。
「………あ。しもた。ハンドタオル…教室や。」
「え。ウチも持ってないで。」
「「…………。」」
顔から水をダラダラと垂らして…。二人、その場に固まる。
「…ほんなら…、貸したろか?」
男の人の声がして、目の前に…タオルをスッと差し出される。
「……あんがとー…。」
とりあえずそれを受けとって、顔をわしわしと拭くと。
タオルからは…、柔軟剤の匂いと、男の人の…汗の匂い。
「……。すんません、ありがとーございました。洗ってお返し………」
ふと、顔を上げて見ると。
「…汗くさかったやろ。どうせ洗濯するもんだし…、えーよ、そのままで。」
白い歯を光らせ、男らしい黒髪短髪の爽やか男子が…
そこに!!
「……。あの…、クラスと名前聞いても…。」
「…?2年2組の阪本だけど……。」
サ…、サカモト!!
「ちなみに坂道の『坂』やねんな?」
「ちゃうよ。阪神タイガースの『阪(ハン)』で阪本。」
は…、阪神の阪で……阪本……!!!!!
「お、おおきに~阪本くん!いい夢見せてもろたわ~。」
「エ。あ、ああ…、うん?」
私は阪本くんの手をとって。ぶんぶんと…手を振り握手を交わす。
その場を去っていく阪本くんの背中を見送って。
それから……、アキラと顔を見合わせる。
「「今の、坂本と似てなかった?!」」
江夏様……、なんという偶然でございましょう。
阪神と巨人をコラボしたどストライクな人間が、まさか…近くにいてるなんて!


