「見たか、日向っ、能見のあのピッチング…!!」
「見たで、見た見た!巨人キラーの異名はさすがやなぁ…!投げてはヨシ、打ってはヨシ!」
「2安打やしな。なのに…、あの失点、惜しかったなあ…!」
「連勝もストップやね。坂本やし…仕様ないねんな。」
「………。待て、お前……!さり気に坂本誉めとるで。」
朝一番。
顔を見合わせた途端に……
由良が昨日のナイターの話題をふっかけてくる。
机に腰かけ、ずいっと身を乗り出して…
「…お前、まさか……」
神妙な面持ち。
「…しゃーないやん、坂本好みやねんもん。チームとしては完全阪神なんやけど…個人にしたら、断然坂本やなぁ…。」
「……裏切り者ぉっ!」
バシン☆と…思い切り背中を叩かれる。
「…ちょっ…、しゃーないやん個人の好みやもん!」
「それとこれとは別や!」
「アホ。わけわからん!」
やんやん声を立てて言い争っていると……、
「おもろいなあ、日向さん。」
真後ろの席の女子が…くすくすと笑っとるんやけど…?
「……エ。」
「野球の話題に必死に食いつく子初めて見たわ。」
「……あ、あはは…、まあ、好きやし。」
「うち、兄貴も野球部だし、父親も大のジャイアンツファンやから…、野球見とるで。坂本ええよね。」
「……ホンマ?!」
わあ…、初めてやわ…
こんな風に声かけてくれる人。
しかも……、野球の話題!!
「………。おー、よかったやん同士がおって。」
由良が…にやにやと笑う。
「…言うとくけど、コイツはただのアホやねん。おっかない顔つきしとるけどなあ、中身は相当とぼけとる。見かけ倒しっ。アンタちょっと相手してやってくれへん?」
「あはは、えーよ。いつも二人のやりとりおもろいなあって後ろでこっそり笑っとったんよ。」
「…なんや、ムッツリか。」
「嫌やわ、由良くん。人聞き悪いなあ。」
そう言いながら、彼女は私の方へと向き直して…にこにことわろてる。
「……よかったやん。友達第1号。」
「…………。」
由良、気ぃ遣ったんか?
第1号だなんて……、そやったら、アンタは一体私の何だっちゅーねん。


