「悩みあんなら、聞くことくらいできるで?」
「…………。」
「こう見えてもな、わりかし面倒みええんで、俺。実は器のデカい男やねん。」
「………。ナリはちっさいけどな?」
「余計なことは言わんでええ。ムード台なしやん。」
「…え。どこにそんなムードが?」
「アカンなぁ…、お前。見てみいや、空ばっかじゃなくて…視界全部がオレンジに染まっとる。すごい幻想的やと思わんのか。」
ああ…、確かに。
目の前のアンタも、
町並みも、
自分の足元でさえ……
見事なまでに、明るいコントラスト……。
「ほんまや。綺麗やなぁ……。」
「せやろ?」
「案外ロマンチストなんやな、自分。」
「………。いや、そーでもないけど。」
「そう?」
「……けど、人が嬉しそーな顔すんの見るのは、好きやねんな。」
真っ直ぐに私を見つめて…いししっと笑う。
「まあ……、そんな情感乏しい日向にとっておきの朗報がある。」
「……ナニ?」
「笑いとうなったら…、電話せい。お前のスマフォに俺の番号登録しとった。」
「……は?」
今……、何て?
「気色いねん、元気ないと。」
「………。」
「気が向いたらいつでもどーぞ。デッカイ船に乗ったつもりで…、せや、タイタ〇ックとか。」
「…一緒に沈没してくれちゃうんかい。」
「嘘うそ、冗談やって。」
「アンタじゃスワンボードだわ。」
「おう、足もっと動かして!…って、何でやねん。」
「……まあ…、でも。……ありがとな。」
「おう、感謝せい。……あ、もう行かな。」
「……ああ、彼女ほったらかしはアカンしな。」
「は?ちゃうちゃう、もうすぐナイター中継始まんねん。」
「………え。」
「阪神対巨人のドーム戦。」
「…ハッ…、そやった!帰らな!」
「…え。」
「ん?なに?」
「日向野球なんて見るんや?」
「……?生粋の阪神ファンやで。見なアカンやろ?」
「…………。そっか。……そーなんや…。」
「……?ナニ?」
「や。気ィ合うな思て。…ほんなら、気をつけて帰りや?」
「……?アンタこそ。」
「おう、じゃあな。」


