ひいちゃんと別れて、どんどんペースを上げて…歩いていく。
「……い…!」
………?
「オイッ!」
「…………?!」
途端に。
ガッチリと肩を掴まれて……
急ブレーキがかかる。
振り返ると、膝に手を置いて、ゼーゼーと苦しそうに息を吐く……
由良の姿。
「………?由良…?アンタ、デートはどうしたん?」
「……っお前のせいで…お開きや。」
「なんか粗相して早速振られたん?」
「粗相したんわお前や!アホ!気づいとらんかいっ。」
「…へ?」
由良は私の前に…何かを翳す。
「……アレ…?それ、私のスマフォやな。いつの間にくすねたん?」
「ちゃうわ!ボケもええかけんにしとけよ?……さっきの店に…忘れとったみたいやから。ちゅーか、お前歩くの速いねん。」
「…アンタの足が短すぎなんやろ。てか…、そんなんでわざわざ届けに…?」
「え。」
「明日でも全然かまへんのに。」
「そやけど…、ないと困るやろ。」
由良はボリポリと頭をかいて、照れ臭そうに…俯く。
「…誰も連絡よこさんし、無くしてもひいちゃんに聞けば友達の番号わかるから…さほど困らんよ?」
「…………。」
………もし無くしたのが由良の方だったら…、きっと、よほど困るんやろな。そりゃそうか、彼女おんねんからな。
私は…違うんやけどなあ……。
「携帯なのに、ウチ不携帯やねんな。……けど……、わざわざありがとー。」
ええとこあるやん、こいつ。
「………。やっとわろたな。」
スマフォを手渡しながら…、由良が真っ直ぐに私を見る。
「…今日一日、元気なかったやん。」
「……そう?暑いからかな?」
「絶対そうやって。眉間にシワばっか寄せて…。ついでに言うならな、お前が俺に笑いかけるの初めてやわ。」
「……え。」
「ええモン見れた。デートすっぽかしたかいあったわ~。」
「………。」
オレンジに染まる空が、由良のほっぺたまでほんのり色づけて。
私はうっかり……
見入ってしまう。


