「あーあ。今こなっちゃんの真後ろに座ったで。」
「マジか……。」
今度は、由良に気づかれぬようにと…
通路とは反対側の、窓の外を…見つめる。
……が、
「もうバレてんで。大口開けてポテト食う女なんてお前くらいやし。」
目の前のポテトをひょいっと口に運んで…、由良がニヤリと笑う。
「…………!」
「うま。ごっつぉーさん。お前ら…、デートの邪魔すんなよ?」
「…………。キモいこと言わんといて。ひいちゃん、小猿の恋愛ごっこなど見たくないからはよ店でよ。」
「……お前なあ……。」
由良は呆れ顔。
しゃーないやん、見たくないモンは見たくないし。
「ほな、邪魔者はたいさ~ん。精々振られんよーに努力せい。」
「ホンッマ可愛いないやっちゃ。言われんでも!」
お互いにプイッと顔を背けて。
「お待たせー。」
由良は彼女の元へと…駆け寄る。
店を出た私は、二人が座る席の辺りを通過する。
ふと気になって…、ガラス越しに…奴らの様子を、チラリと…見てみる。
「…………!」
脳天気に笑う由良の横顔。
「……おっと…。」
不機嫌そうにこっちを見るチワワの視線が…私の視線とぶつかった。
思わず私は…顔を背ける。
「……。こなっちゃん、気ぃつけや?ありゃあジェラシーやね。」
「…はあ?」
「自分の彼氏が他の女と仲良くしとったら…そりゃあヤキモチやくねん。」
「…………。」
「こなっちゃんにはまだわからんか。まあ、いずれわかるやろ。焦らず、焦らず……。」
ひいちゃんにポンッと肩を叩かれるも、私には全く理解不能なおハナシで。
だけど……、
ひとつだけ。
由良のあの気持ち悪いくらいに優しい笑顔が…
頭にしっかりとこびりついて、離れんかった。


