私はね、セクシュアルマイノリティなの。
そいつの家に行き、部屋に入った時そいつは言った。
「嗚呼、……で?」
セクシュアルマイノリティ、その言葉を自分以外で聞くのは初めてだ。
「私、レズビアンなんだ。……女の子にしか興味がない。女の子じゃないと、だめなんだよ」
思い詰めた口調で言われ、俺は口籠もる。そいつは俺を見ると、自嘲気味に微笑み
「笑っちゃうでしょ? 私みたいな子がレズビアンなんて・・・」
口では強がっているが、声はいつ壊れるかわからない危うさがあり
「そ、んなこと・・・ない……っ!!」
気付けば、俺はそいつを抱き締めていた。
「可笑しいなんて、笑っちゃうなんて、そんなことない! お前は可笑しくない、お前は普通だ! 人間が人間を好きで、可笑しいなんてことは、ないっ!!」
早口で捲し立て、更に強く抱き締める。するとそいつは腕の中でむずむず動いた。
「ふふ、やだなぁ。だから言ったじゃん〜、キミも私も『同類』なんだって〜」
くす、含み笑いで言われ、少し腕の力を緩める。そのまま頬に触れると、優しく口付けをした。
「・・・いつから気付いてた」
耳元で言うと、擽ったそうに身を縮める。
「入学式から。……だって、ズボンのサイズもブレザーのサイズもあってなかったんだもん。男の子にしては可笑しいって、すぐにわかった」
嗚呼、言われて漸く気付いた。
「キミは」
「……そうだよ。俺もお前と同じ、ビアンだ」
ふふ、そいつはまた楽しそうに笑うと首筋に擦り付いた。

