「……私が、・・・たまに、いなくなる?」
俺の言葉を聞いた途端、そいつは少し困ったような顔をした。
「あ、あはは。い、嫌だな、・・・私がいなくなるとか、どんなホラーだよ。…………キミの思い過ごしじゃない?」
いつもの間延びした口調ではなく、初めて聞く普通の口調で、そいつは続ける。
「だ、大体っ、私がいついなくなったのさ?」
妙に慌てた様子でそいつは捲し立てる。俺は、聞いてはいけないことを聞いたと今更後悔した。
「わ、悪ぃ。まだそんな親しくもねぇのに余計なこと聞いたな。忘れて」
「いいよ、別に。」
俺の言葉を遮り、そいつは続ける。
「いいよ。だって、いつかは話そうと思ってたもん」
普段とは違う、普通のテンポでそいつは言う。
「……それに、私とキミは『同類』だと思うよ」
そよ風が吹き、けやきの枝を揺らした。

