私は、闇から自分を守るように

膝に顔を埋め、しばらくの間そこに丸まりながら

考えていた。


あの可愛らしい、優しい鳴人が

何故私にこのような仕打ちをするのか…。。


私を特別だと言った鳴人……。


鳴人は私が人柱である事を知っているのだろうか??


…でも、鳴人は何処からどう見ても普通の人間だ。


例え、私が人柱だと知っていても、

神や妖にとっては特があるかもしれないが、

人間である鳴人自身には、何の得もない。



そんな鳴人が私を捕らえる理由があるとするならば………




『お前は狙われている』



銀狼の言葉が頭をよぎった。




「ブルっ!!」



嫌な予感を感じて

大袈裟に身体が震える……。




―――ダメだっ!!ここに居ちゃいけないっ!!




私は暗闇の恐怖に打ち勝つように

顔を上げた。


どうにかここから脱出できないかと

暗闇に目を凝らす。


しばらく暗闇に居たせいか、室内の様子が

ボンヤリと闇に浮かんで見えた。



真新しい畳の匂いがする。


視界が不自由なせいか、五感が鋭敏になっているようだ。



畳の敷かれたこの部屋は、縦長の造りになっているようで、

暗闇に慣れてきた私の目でも、

奥の方は濃い影になっていて

先がどうなっているのか、

ここからでは解らない。


見えない恐怖はあれど

ここでじっとしている訳にはいかない。


私は震える両足に力を込め、

その先の闇へと歩を進めた。



思ったより、広い部屋のようだ。

壁伝いに手探りで先へと進む。


10歩程進んだ時…

何かに蹴躓いて倒れ込んでしまった。


何かと思い手で探ってみると、段差になっていて、

ここから先は一段高い造りになっているようだ。


「イタタタ……」


膝を派手にぶつけてしまい、さすりながら身を起こそうとすると……。




「……相変わらず…勇ましいな……」




ふいに一番奥の闇の部分から、男の声が響いた。

人の気配など微塵も感じなかったのに……。



緊張から一瞬で身体が強ばる。


「誰っ!?」


身構える私に、

その声の主は笑いを含みながら私の質問に答えた。



「ふふ…。『誰』かって??

 お前は俺に会った事があるはずだぞ?」



声のする闇の奥に目を凝らす。



「この姿でお前に会うのは……

 二度目だな……」


暗闇の中心に小さな白い光を見つけた。


その光は、徐々にその面積を広げ、

人の形を造りあげた。




「久しぶりだな……。夏代子……」