暗い視界に優しい橙色が広がる…。
それは神社へと続く参道だった。
参道の両脇には、5メートル間隔程で、灯篭が添えられていて、
その灯篭から漏れ出した鈍い橙色の明かりが
参道を淡く照らし出し、境内へと続く神様の通り道を示していた。
暗闇に浮かぶ、橙色の参道は
浴衣姿の人々がまばらに行き交い
なんとも田舎の夏祭りらしいのどかな雰囲気を作りあげている。
「……わぁぁ~~っっ!!」
その佇まいは私の想像を超えていた。
「ふふっ…ちょっと凄いでしょ??」
鳴人が得意気に私を見る。
「……うん……凄いっ!!」
思わず笑みがこぼれ落ちる。
「早くっ!!早く行こうっ!!」
「ちょっ…ちょっと、真央ちゃん!」
私はもたつく鳴人の腕をグイグイ引っ張って車内から引っ張りだした。
橙色の参道を通って立派な石造りの鳥居をくぐると、
祭りらしく屋台が所狭しと並んでいた。
「お姉ちゃん、焼きイカいらんかね??」
屋台のおじさん達は威勢よく声をかけてくる。
その都度足を止める私は、
しばらくすると両手いっぱいに食べ物を抱えていた。
鳴人はそんな私の様子を見て苦笑して言った。
「真央ちゃん。もうそれ以上は持ちきれないでしょ??
そろそろ花火の上がる頃だし、特等席に案内してあげるから
そこで花火でも見ながらゆっくり食べればいいよ」
は…恥ずかしい……。
「ごめん……はしゃぎすぎちゃった」
「いいよ、いいよ。想像できてたし」
鳴人はクスクス笑いながら
『こっちだよ。』
と、私の前を先導して歩き出した。
鳴人について、境内の裏手に周ると、
そこから石畳の階段があり、
神社裏の小高い山へ登って行けるようになっていた。
そこは表の賑やかさが嘘かのように
人気もなく静かだ。
かすかに祭りばやしが聞こえてくる。
薄暗く、人気も無く、どことなく不気味さを感じさせた。
その雰囲気のせいか、
二人とも気付けば無言になっていた。
「………」
「………」
私は、その静けさに不安を感じ、堪らず鳴人に声をかける。
「……なんか……静かだね…」
「そうだね」
「……ねぇ、何処に行くの??」
「特等席だって言ったでしょ??普通の人は入れないんだ。
真央ちゃんだけ、特別だよ」
「……そうなんだ…」
鳴人は、私の前を歩いているせいなのか、
先程からこちらを一度も見ない。
ただ前を向いて薄暗い山道を登って行く。


