「さ、急ごう!川向かいに車を止めてあるから」
前を歩き出した私に
鳴人は不審な私の行動に気付かないフリをしてくれているのか、
それとも全く気づいていないのか、
変わらぬ調子で明るく笑ってそう言った。
……ん…??
……車……??
私は彼のその言葉に遅ればせながらもギョッとして聞き返した。
「車っ!?鳴人、運転出来るのっ!?」
このどう見ても同級生ぐらいの女の子にしか見えない鳴人が運転!?
「………僕……ハタチだって言ったよね??
歩くには少し遠いからわざわざ車までだしたのに………。
… なんなら、真央ちゃんだけ歩く??」
横目で睨みながら、毎度失言する私を軽く罵る。
「う……ごめん……。是非車に乗せてクダサイ……」
可愛く頬をぷぅ〜っと膨らませ、拗ねた素振りをする鳴人は
何度も言うが、やっぱり可愛い…。
私達二人はそんな風にじゃれあいながら
まだ明るい、おばあちゃんの家から続く一本道を下り、
犬神神社を超え、川向かいに停めてある
鳴人の軽四の車に乗り込んだ。
鳴人の車は、白い軽四のワゴン車で
可愛らしい鳴人にぴったりだと思った。
車が走り出すと車内のステレオから
最近よく耳にする夏らしいポップ音楽が流れ出る…
私のテンションも陽気な音楽に合わせて跳ね上がって行く…
「ねぇ、ねぇ、鳴人。今夜、花火とかあがる?」
瞳をキラキラさせて尋ねる私を
鳴人は微笑まし気な横目をよこして答えた。
「自慢じゃないけど、一応この辺りでは一番大きな神社だからね。
小さい規模だけど、花火も上がるよ!」
「本当!?超楽しみっ!!りんごあめあるかなぁ??
焼きそばに、焼きとうもろこしも、あるかなぁ??」
「ぷっ……!!」
鳴人が苦笑する。
「真央ちゃんは、色気より食い気だね。
華の女子高生がそんな事でいいの??」
鳴人の意地悪な質問に
頬をぷくっと膨らませて見せる。
「いいんですよーだっ!!そんな事言うなら鳴人には分けてあげないから!」
「ごめん、ごめん。僕、美味しそうに沢山食べる女の子好きだよ?」
「何それ!いかにもあたしが大食いみたいに言わないでよ!」
車内で、そんな他愛ないやり取りを繰り返しながら…
車で走る事30分……。
「そろそろ見えてきたよ」
鳴人は車を停め、指をさした。


