怒りに奮える銀狼を蒼白い炎が包み込む。
その蒼白い炎の色は、冷たい輝きを放ち彼の今の心を表しているようだった。
刹那…
眉間に皺をいくつも寄せ、般若の面相をした銀狼から
巨大な蒼白い光の玉が、山神めがけ放たれた!
「山神ぃぃっ!!覚悟しろっ!!」
銀狼の上げた咆哮に周囲の空気がビリビリと振動する。
妖しい笑を浮かべていた山神だったが、銀狼最大の攻撃にその顔付きをついに変える…。
「お前がいくら俺に挑もうとも、
人柱を取り込んだ俺に
勝てるわけがなかろうがぁぁっ!!」
山神の身体から、金色の光が立ち上ったかと思うと
その光は瞬時に閃光へと変わった!!
「どおおおおおおんんっ!!!!!」
凄まじい爆音をあげ
山神と銀狼の間で巨大な蒼白い光と、金色の光がぶつかり合うっ!!
「うおおおおーーーーっ!!」
両者の上げる咆哮に、世界が揺れるっ!!
山神の瞳が、翠緑色に力強く輝く。
「…お前が俺に…」
金色の光を放つ山神の両手がさらに前へと押し出された。
「…かなうわけがなかろうがぁぁっ!!」
押し出された両手からは、さらに強い金色の光が放たれたっ!!
金色の光が、蒼い光を飲み込み、銀狼に襲いかかるっ!!
「どっ、どおおおおおおおんーーーっ!!」
凄まじい爆音を上げ、その衝撃の激しさから生じた煙幕が
銀狼の姿をおおう!
『銀狼っ!!』
山神の器官を通して、一部始終を見ていた夏代子が
祈るようなせつない悲鳴を上げる…。
その悲鳴は山神にも響き、彼の表情を曇らせた…。
「…か…夏代子…」
せつない響きと共に、銀狼の姿が立ち上る煙幕の影に確認できる…。
「…か…よ…こ…」
銀狼はその名前を繰り返し呼び続ける…。
普段、鼻持ちならぬ程、偉そうな態度の銀狼だが…
今は地べたに這い蹲り、傷つき、血を流しながら、
苦悶の表情を浮かべ、繰り返しその名を呼んでいる…。
「…か…よ…こ、…か…よこ……、夏代子おおおおおおっ!!」
夜空に叫ぶ銀狼の姿を、美しい月が照らし出す…。
それを目の当たりにした山神の顔は激しく歪む!
「銀狼っ!!!これがとどめだっ!!死ねえええええっ!!!」
先程より巨大な金色の光の玉が山神の手の内から作り出されるっ!!!
『やめてええええーーーっ!!!』


