困ったな…。
こんなの、いつぞやかの真ちゃん以来だ。
行き先の判らないドライブ。
真ちゃんは怖くなかったけど、この人は…ちょっと……。
「…仕事、残してるんで…ウチに戻ってくれませんか?」
私は極力、静かに話し掛けた。
呼吸と共に鳴る胸が、苦しい。
風邪だけじゃなく、多分。
ちょっと、怖いから。
「え、今日、誰もいなかったじゃん?仕事、ほんとは休みだったんでしょ?」
いつも無理聞いてもらってるし、お礼に食事でもと思って。
なんて。
さも当たり前のように、というか。
私が喜ぶと…思っているかのような、奇妙な違和感に。
やっぱり、定演の日の人は、この人だったのかも知れない、と。
鳥肌が、立った。
どうしよう。
ねぇ、哲。どうしよう。
この人、変な人だけど…得意先の跡取り息子だよね…?

