具合…悪い。
胸、痛い。
気分、悪い。
「狭山工販さん…?」
どこに、向かってますか?
「やだなぁ、そろそろ名前で呼んでくれない?」
「……………」
訊いた事に答えろ。
そろそろも何も、私はあなたの名は知らないし、知りたいと思った事もなかったよ。
「あれ?名前、知ってるよね?」
「………いえ」
ごほり、と。
胸の奥が、鳴る。
ちょっとした警鐘も、鳴る。
「久志だよ、狭山久志」
「……そう、ですか」
で、狭山工販さん、どこに行くつもりなんですか?
熱が、上がってる気がする。
朝飲んだ頭痛薬は、ほんの4時間すら、効かなかったみたいで。
だるさと、胸の痛さと。
この、馴れ馴れしく、名前で呼べなどと抜かす男が。
ひどく不快だった。

