磯部さんが、手を洗う私のそばに立って、具合は大丈夫か、と気にしてくれた。
「組み立てたら、すぐ戻って、休みます」
哲が戻ってきたら、私の台車の上にあるやつ、お願いします、って言って下さい。
にこりと。
そう、頼んだ。
今日は、この部品だけ加工して止める予定だった。
まさか、現場に連れて行かれちゃうなんて。
まさか。
しばらく帰して貰えないなんて、思いもしなくて。
ただ、定演の日の帰りのことが頭をよぎって、少しだけ。
少しだけ。
車に乗るときに、嫌な気がしただけで。
私は、ヤスリで微調整しながらピッタリと組み立てを終えて。
そのまま帰るものだと思っていた狭山工販の車が、帰路から外れた事に、黙り込んだ。

