「まだ終わらないの?」
…カチンっ。
まだ12時なのに!
「待ってるからさ、新聞か雑誌ある?」
私は仕方なく手を止めて、お昼休みに入った、シゲちゃんのスポーツ紙を手渡した。
どう育ったら、こうなるんだろうなあ…。
私、お昼返上で頑張ってるんだけどなあ。
…………この馬鹿の為に。
もう、早く仕上げて帰って貰おう。
「あ、蜜さん、さっきのお菓子食べた?」
「………いえ」
だから、休みなく働いてんだっての。
って言うか、名前で呼ばないでよ。
「えっ、それもまだ!?」
のんびりさんなんだなぁ、なんて。
…………ッの野郎…
「あ、そうそう。これも。やっぱチョコレートだけじゃ悪いと思って」
持っていた小さな、ラウンドに組んだ花束を、私の胸のあたりに突き付けて。
かの人は、私が喜ぶのを待っている。
確かに。
ピンクのボロニアの花は。
……爽やかに甘い、強い香りを漂わせているけれど。

