【続】朝の旋律、CHOCOLATE



淡々と。
仕事をする。

急げば早く出来るか、って言うと、決してそんな事はない。


私は、ステンレスの真ん中に小さな穴を開けながら、ぼんやりと考える。



昨夜、隠れるようについてきていたような気がしたのは、気のせいだったかも知れないと。

だって、そんな様子、なかったよね?
さっきの狭山工販さん。


…真っ当に職もこなせない男だという認識も…変わらないし。




旋盤の音は。
今日も元気に響いていて。

昨日の定期演奏会の事とか。

打ち上げでつまんだ、エビの炒め物の、香りの正体はセロリだろうか、とか。

さっき貰った、チョコレート菓子は、見たことがない品物だった、なんて。



午前中が終わり、お昼休みに突入してもまだ。

私の仕事は終わらない。



哲が、お昼ご飯を調達しに出掛けて、ほんの二分。

約束どおり、というか、宣言どおり、狭山工販の跡取り息子は、小さな花束を持って、現れた。