真ちゃんは。

ひでぇ女、と苦笑して。

乳ねぇくせに生意気なんだょ、と、体を起こした。




「蜜」


俺、ばぁちゃんとイギリス行くわ。




「………うん」



なんだか、切なかった。
なんだか、怖かった。

引き止められない。


色んな事が、頭の中を駆け巡る。



何をどう話すべきか悩むより、何も話す事が無かったことに、心が締め付けられた。



ただ、元気でね、って言うしかない?


See you again?
それとも、Bye-bye?





「哲、悪かったな」

あ、画鋲、気をつけな。
踏むとチョー痛ぇよ?



真ちゃんはひとりで、さっぱりした顔をするけれど。

私は未だ、ベッドの端で茫然と。


ドアに貼り付けたシーツを剥がして、画鋲を拾う真ちゃんの横顔を、眺めていた。