哲は。
私の泣いた理由が、サヨちゃんとの別れ、と知ると。
ならいいや、と笑う。
スタートレック、巧く行って良かったな、って。
必死で練習していた事を知っているから。
あ、アメリカ横断ウルトラクイズの曲ね。
「ドラえもんも演れば良かったのに」
「ええっ?」
だってアレ、指使い凄かったぜ?
正露丸より良かったのに、なんて。
唇のピアスを笑みに乗せる。
私は。
そんな哲の顔が、好きだ。
以前よりもずっと、はっきり浮かべる笑みが、好き。
ドラえもんの曲は、正露丸のテーマの次に、私がいたずら吹きをする、曲。
結構、難しいんだよ?
私は。
笑う哲に丸め込まれるように、さっきまで感じていた不安を、忘れる。
繋いだ手に、緊張じゃない心地よさを、感じる。

