【続】朝の旋律、CHOCOLATE



「…嬢ちゃん、無理に哲を許す事ぁ、ねぇんだぜ?」



工場への道を歩きながら、シゲちゃんは呟いた。



「え?」


いくら過去の話だ、って言ったって、嬢ちゃんに聞かせていい話じゃねぇんだ。


シゲちゃんは。

嬢ちゃんは、いつも感情を抑えつけて我慢するから、いつも自分が壊れちまうんだよ、なんて。


私を睨みながら。
元々は美形だった気がする顔を、憮然と、歪ませた。




「………でも、あんなの…怒りようがない、です」


私が怒ったら…。
哲、困っちゃうもん。

そんな、過去の話に……ただでさえ納得いかない話に…怒れない。

怒れないし、哲のせいじゃない、し……。




「それに……」


ここんとこ私。
哲に頼りきりで。

哲が、困った時にくらい私…。


せめて、ひとりで立ってられるから、私のことは気にしないで、って。



思った、から。