ん~。
おかしいな。
また見ちゃった。
また、チラッと見えちゃった。
私達は、楽器を持って歩く。
私はトランペットだから、比較的小さいけれど、コントラバスだとか、ユーフォニウムだとか。
大きい楽器を持って帰る人は、いつも大変そうで、いつも目立つ。
地下鉄で、ほんのいくつかの距離だけど、話題はやっぱり今日の演奏の事と、客席にいた、号泣禿げじじ……
………いや、頭髪のさっぱりした、団長のお父様。
誰だ、禿げじじぃなんて言ったのは!
…毎年、さっぱり度が上がる、このお父様は、孫を連れて、いつも大泣きしては、スタンディングオベーションで喝采してくださる。
一瞬引いてから、つられて立ち上がる観客の空気が、毎年おもしろくて仕方ない。
そんな話を、小さめにはしゃぎながら喋っていた私の。
また視界の端に。
………気持ち悪い、かも。
あれ、やっぱり狭山工販さんとこの長男…だよね…?

