血液検査の書類を持ってきてくれた学生くんは。
ちゃんと私を覚えていてくれて。
「まだ……あの方に…付きまとわれてるんですか?」
なんて。
小さな声で、訊いた。
私は。
否定出来ないけど、でももう、大丈夫だから、と。
リハビリ介助の人みたいな、しっかりした体つきの看護学生くんを、にこりと見上げた。
「相変わらず…あっさり嘘吐くんですね」
……お…お前こそ相変わらずイヤな奴だなっ!
味覚無くすなんて、相当つらいんじゃないですか?
ちゃんと、警察行きました?
ほんと、気をつけてくださいよ?
僕、救急で血だらけな倉橋さんには会いたくないですからね?
早口で、一方的に。
しかも囁くように不吉な事をまくし立てた学生くんは。
早く採血行ってください、なんて。
私に口を挟ませないまま、あっさり私の背を、押した。

