「眼鏡してると、客席見えそうで、緊張するんだよね」

と、照れたように笑う遼は。


以前とは違うけど、以前と同じように綺麗な所作で。

バイキング形式に整えられたテーブルから、エビの炒め物を、取り分けてくれた。



「蜜はいつも食べないで飲むから」

だからすぐ酔っちゃうんだよ、なんて。


遼も。
努めて以前のように、振る舞って、笑顔を見せてくれる。


心のどこかで。

あの時、哲が靴で踏みつけてごめんね、とか。

思うのだけれど…。



………言えないよねぇ…。


守ったら余計気まずくなる、アップルパイの約束とか。

謝ったら余計気まずくなる事とか。



遼、もう少ししたら。

おこがましいかも知れないけど、遼が、私を忘れたら。



アップルパイの約束、守るからね。