「善ちゃん?わたし。操緒」
急に甘い声で、彼氏に電話をし出した社長に、私と哲とは顔を見合わせて。
美味しそうだけど、おにぎりらしく手掴みでは食べられそうもない“おにぎり”に、お箸出そうか、と囁きあった。
「ごめんなさいね、今日わたし、用事ができて」
ダンス行かないから。
おにぎり、取りに来てくれる?
ああっ!
今日、社交ダンスの日!
つーか社長!
このニンニクいっぱい入ってそうなもの、みんなで食べるつもりで作った残り!?
ダンスなのに!?
……社長…怖ぇね、哲…。
…そ…だな…。
つーか、…美味しいね。
……あぁ。
図らずも、哲と食べる事になったお昼ご飯。
高そうな牛肉は、やっぱり高級な味で。
私は。
しばらくものを食べていなかった胃腸が、この脂に耐えられるか心配しながら。
少しずつ、口に入れた。

