あと一匙、とねだる哲がもしかしたら、可愛いのかも知れない。
何だかんだと文句を言うご主人は、うちの社長の社交ダンスのパートナーで。
たまに、哲や私が、社長の送り迎えをするときにも、一緒に車に乗る事が多い。
………まあ、社長の彼氏って事よね。
「お前は…ほんとにイクラ好きだなぁ」
「ここの、旨いですもん」
さらりと、さも当たり前のように言う哲が、その場限りの甘言を言っている訳じゃないのを、私も、ご主人も、知っている。
だって。
哲、いつも至福の顔して食べるもん。
や、表情は比較的乏しいから、よく見てないと判らないのだけれど。
仕方なさげに笑いながら、哲の小鉢にもう一匙入れてくれたご主人は。
私に焼いた銀杏を三粒出してから初めて、注文を訊いた。
鯛カマと、イクラと、銀杏。
あと足りない物は。
「……白いごはん下さい」
「海鮮丼2つと、味噌汁と茶碗蒸しと茄子の山葵漬け」
2個っ!?
か…海鮮丼にもイクラ乗ってるのに!!
真ちゃんの彼女に理不尽に怒られたからって!
魚卵のやけ食い反対!
………つーか
…ホタテ…分けてね?

