何となく、何となくで。
練習は終わってしまう。
一生懸命やれば、じつに有意義で楽しい練習も、何となくそぞろな気分で過ごしてしまえば、それはそれまでで。
不完全燃焼どころか、燃焼自体しないまま、時間だけが過ぎてしまった。
来週は頑張ろう…。
来週には、薬も終わるだろうし、トランペット吹いても胸が痛むなんて事、なくなってるに違いないし。
来週は…狭山久志の影に、哲が心配するような事も、きっとない。
きっと全て丸くおさまって。
レモンのマーマレードも、出来上がってるに違いない。
あ…、マーマレード……ちょっとは分けてくれるかな。
全部真ちゃん、持って帰るのかな。
あとで、訊いてみよう。
トランペットのケースを閉めて、私は。
髪、伸びましたね蜜サン。なんだか急に綺麗になりました。
気をつけて帰ってくださいね、なんて言う団長に、笑顔で、手を振った。

