私は。
2人はてっきり、御茶ノ水あたりの楽器屋に行くんだと思っていたのだけれど。
私が降りる駅で一緒に降りた2人が、私と一緒にそのまま改札を出たことに、ちょっと首を傾げた。
「…どこ行くの?」
「楽器屋と本屋と居酒屋」
「…うん、それは聞いたけど」
だって、この先に、楽器屋さん無いじゃん。
ちょっと譲って、そこの小さな楽器屋に行くとしても…通り過ぎたじゃん…?
「相変わらず蜜の頭はスポンジですね~」
だから乳デカくならねぇんですよ~、なんて、真ちゃんは笑う。
「………ッち…乳が関係あるかっ!」
真ちゃんは、歩きながら私の髪をかき混ぜると、少し身を屈めて。
「哲は、蜜が心配でたまんないんだから、黙って送られときゃいーの」
変なのに好かれたんデショ?
と。
真剣なような、それでもからかっているような表情で、真ちゃんはそう、囁いた。

