Sympathy For The Angel

「ちょっと叱った。ルカからの連絡には応じてやれって。それから昨日、店が終わったらアンタにちゃんと電話かけろって念押ししたけど、連絡は来た?」

ルカが机の上から携帯を持ってきたが、それを慌てて充電器に差し込んだ。

「電池、切れてたみたいです……。ずっと寝てたから気がつきませんでした」

「よくあるよね、そう言う事」


無難にそう返したけど。

ルカはもう、無意識の中に逃げ込んでしまったのかな?

あんな事があって、普通だったら彼氏からの連絡を待ち望んで、携帯ぐらいずっと握っていそうなもんなんだけど。違うかな?


「あの。ルカさん、これ椿さんからの差し入れです。Limelightの美味しいケーキですよー」

果たして空気を読んでか読まずなのかは分からないが、真依が柔らかく笑ってルカにケーキの箱を手渡した。

「ありがとう、…ございます」

「いいよ。けどさ、きちんと何か食べてるの、ルカ?」

「あんまり食べたくなくて……」


あれからルカは、少し痩せたみたいだ。




痩せたと言うより、窶(やつ)れているように見える。

「あ、本当だ。シズから何回か着信入っていました」


起動させた画面を、ルカは愛しげに見つめてゆっくりと撫でた。


「昨日、樹にも言われたんだよね。あの時は忙しくてシズを抜けさせられなかったってさ。本当はシズも、アンタを助けに行きたかったみたい」

「……良いんです、もう。全部終わっちゃった事だし……」


携帯から目を離し、ルカは窓の外に視線を向けた。

その目は私達を通り越して、どこか遠くをさ迷っている風に見える。


「……良いんです……私は…」

「良いわけないでしょ!?」

日頃短期なエリカ様が、いきなりルカの胸ぐらを掴んで立ち上がらせた。

おいちょっと待て相手は弱ってるんだっつーの!!


「私だってアイツらが何も言わなかったのには腹が立ってるんだよ!?けど、アイツらだってこうやって椿にちゃんと話つけたんだから、アンタも逃げないでシズと向き合いなよ!」

「エリカ!止めなって!」


さすがに見かねて、真依と私でエリカとルカを引き離した。


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