Sympathy For The Angel

シズの場合、私服か特攻服姿しか見たことないけど、これは化けすぎだろう。

スーツを着ただけで色気5割増しって。ホストクラブってつくづく怖い。


「お前、何でシズに見蕩れてんだよ」


すっかり気を悪くした樹が拗ねた。ちょっと可愛いかも。

「シズ、お前椿から5メートル離れて座れ」

「それ同席って言わないからね」


何気に樹に釘を刺して、シズにも隣に座るよう手で指し示した。

「私が言いたい事、分かるよね、シズ?」

項垂れるシズを見る限り、開き直ってる様子は見られない。

その事に安心して、私は言葉を続けた。

「樹やアンタ達の事情をきちんと知っていれば、もっとルカの事もフォローしてあげられたんだけどね。私自身がたった今、このクラブの事情を知ったばかりなんだよ」


シズはひたすら俯いていて、顔を上げようとはしない。


「ルカから連絡あった?」

樹の手を握りながら、シズにそっと尋ねた。

そうしないと樹がまた拗ねるからだ。


「何回か……」

「……ルカが襲われてから、シズからは連絡してあげたの?」

シズを労ってできるだけ優しく言ったつもりだったが、シズは手で顔を覆って、大きく肩を揺らした。


「してないです。今日、学校に行ってからアイツの顔を見て、ちゃんと話し合いたかったけどアイツ学校には来てなくて……」

「snow drop には来てたけどね、ルカ」

顔を手で隠したまま、シズは沈痛な声を漏らす。

本当は、ルカを助けに行きたかったんだね、シズ。


「……ルカはさ、蘭を抜けたよ」


ぽつりと漏らした私の言葉に、シズがハッと顔を上げた。


「それマジっすか?」

「大マジです」

「茶化してんじゃねぇよ」


そう言って樹が私の手の甲を叩いた。

ちょっと、地味に痛いんですけど。


「シズの気持ちをはっきり聞きたい。ルカの事、今はどう思ってんの?」

シズの口から聞きたかった。