「どうします?」


早紀が泣きそうな顔で聞く。



「仕方ない……とりあえず歩いて山を越えるしかないな」


輝之は顔を歪めた。


「そっか、歩いていけるって言ってましたもんね」


「ああ、うん。でも結構かかるよ」



「それでも泳いで帰るよりはいいです」


早紀はあえて笑顔を作った。



「あははそうだね」


その笑顔で、輝之の心も少し軽くなった。


二人は仕方なく山越えを決断し、並んで歩き始めた。