「すみませーん」


輝之はあちこちの家に向かって必死で叫んだ。


玄関のドアを叩くのだが、どの家もまったく反応がない。


誰もいないわけなどないのだ。


さっき港から、この通りに曲がって来たとき、

さっきのお店の前には人だかりがあったのだから……



それが自分の姿を見た途端に、一斉に逃げ出してしまった。


いったい何がどうして自分たちを避けるのか分からないけれど、

このままではドンドン船が流されてしまう。


輝之はほぼ全ての家のドアを叩いてから、ついに諦めた。