「もう大丈夫だ」


すぐ横で声がして、早紀は振り返って言葉を飲んだ。



綾と健太郎も息を飲む。


男の幽霊がそこにいた。



「久しぶりだな早紀」



その幽霊が母の名前を呼んで微笑んだから、綾は死ぬほど驚いた。



「祐次……」


「元気そうで良かった」



「うん」


「オマエの子供か?」


祐次が綾のほうを見る。



「うん。娘なの」


「そうか……可愛い子だな」


「うん」


「まぁ、俺の子供じゃないのが残念だけど、オマエが幸せそうで良かった」


「うん」


「旦那さん優しくしてくれるのか?」


「うん。とても優しい」


早紀の目から流れる涙が止まらなかった。