「何だったの綾?」


健太郎が綾の顔を見つめる。


「う、ううん。何でもない」


綾は慌てて笑顔を作った。



何か思い当たること……。


で、綾が思い当たったのが、例の幽霊屋敷の幽霊のことだった。



あのとき私は幽霊に襲われのだ。


確か名前は金森美絵さん。


もしかして……


金森さんの霊が私にとり憑いて、この島に来たせいではないのだろうか?




綾はそう思ったのだ。


でもその仮説をみんなには言わなかった。


言えば親友の茶和子や有吉先生を、自分が殺したと皆から思われそうだったからである。


美術館職員の松本さんや、平尾さんにも同僚を殺したって責められそうだし……。



言えない。


誰にも言えない……。


綾は押しつぶされそうな胸の痛みを堪えて、ただひたすら歩き続けた。