そして当日。



「じゃあママ行ってきまーす」


綾は満面の笑みで手を振り自宅を後にする。


もう入賞したつもりでいるのだ。


入賞すれば毎年瀬戸内海の島で行われている、瀬戸内芸術祭へ参加することが出来る。


ちょっとしたプチ旅行。


そしてそれは、ずっと片想いだった健太郎くんと急接近する大チャンスなのだ。


「審査員の皆様お願いします」


綾は手を合わせて拝んだ。


電車で待ち合わせて会場に向かう。


「なぁ、オマエら知ってる?」


その電車の中で、突然浩太が目を輝かせる。


「知ってるって何をさ?」


健太郎が聞き返した。


「会場のすぐ近くに幽霊屋敷があるんだってさ」


「はぁ? 幽霊屋敷?」


「うん。行ってみない」


「ヤダよ」


「何だよ根性ねぇなぁ~。そんなんじゃ……」


浩太は健太郎に言いかけて、チラっと綾を見る。


「え? 何?」


綾は気になって聞き返した。