「彰ちゃん!」
「おばさん!」


三人は急いで段の下を覗きこみ、懐中電灯で照らしてみたけれど、そこにはすでに彰子の姿はない。



「彰ちゃん!!」

美春が叫んだけれど、その声は真っ暗な海と波の音にかき消される。


敦也も一瞬飛び込んで助けるべきか悩んだが、すぐに無理だと判断してやめた。


静寂の中ポツリと後ろから声が……。


三人は振り返った。



「逝かなきゃ……ママが呼んでる」


美波はそのままフッと消え、三人は暗闇の中に取り残された。



辺りからは完全に気配が消え、静寂だけが残されている。


三人は彰子のことを諦めて、洞窟を後にして保養所に戻った。