「参ったのぉ……」


貴志とその妻の美春は、途方にくれていた。


父と共にドクターヘリで、本土の病院に運び込まれたのだが、

結局父はそのまま息を引き取ってしまった。


貴志のほうは頭を打ったものの、脳波にも異常はなかったので一安心だったのだが、

いかんせん困ったことになっているのである。


父の遺体を島に運ばなければならないのだが、大輔も茂行も……そして島の漁師仲間の誰にも携帯電話が繋がらないのである。


島に向かう定期便は、明日の朝7時まで営業しないし……。


仕方なく自宅に電話をして母親に連絡を頼んだのだが、その後の連絡がなかなかなく。

やっとかかって来たと思ったら、茂行と大輔が沖神に行ったまま帰らなくなったとか、

また幽霊が出たとか、島中が大騒ぎになっているらしい。


とりあえず誰でもいいから、船を持っている者に迎えにくるように伝えてほしいと、

母に頼んでから、すでに一時間近く待たされているのだ。


病院の職員が港まで、父の遺体を運んでくれたが、さすがに島までは運んでくれないので、

船が来るまで一緒に待機してくれているのだが、いい加減帰りたそうにしていた。