「なぁ、何があったんだよ?」


急ぎ足で坂を昇る早紀の背中に祐次が声をかける。



「え?」


「何で船で行ったのに、歩いて帰って来たのかってこと」



「ああ、うん。それが私ったらバカだから、ロープがちゃんと繋げてなかったの」


「え? ロープ?」


「うん。船を岸に繋ぐロープ」



「ちょ、じゃあ船が流されちゃったのかよ?」


「うん。それでね。島の人に頼もうとしたんだけど、誰も助けてくれないの」


「え? 何でさ?」


「分からないよ。分からないけど……なんだかまるで、私たちに怯えてるみたいな感じで、みんな家の中にこもって出てきてくれないのよ」



「へぇ……何なんだろうな……」


早紀の泣きそうな顔を見て、祐次は言葉に詰まった。