船は定期便の着く港ではなく、海に面した保養所の敷地内に設けられた係留場所に着いた。


「わーすごいじゃん」


開口一番、由梨が目の前の建物を見て感嘆の声をあげる。


「悪いんだけど祐次くん、このロープをあそこにくくってくれる?」


輝之が船を岸に寄せながら頼んだ。



「あっ、はい……って、くくり方は?」


「ああ、そっか」


輝之はロープの先を巧に結んで輪っかを作ると、


「これをあそこに掛けて」と頼んだ。


一番に祐次が上陸すると、手に持ったロープを欄干にかける。

輝之はそれを手繰り寄せて船を横付けすると、後ろのフックに引掛けて固定した。


「順番に下りてね。それから荷物渡すから、バケツリレー方式で頼むわ」


輝之はエンジンを切ると、運転席の下の荷物置き場から、みんなの荷物を取り出していく。






「きゃぁああああああああ」



その時美絵が叫び声をあげた。