「結構近いんだね」


島が目前まで近づくと、由梨が瞳に言った。


「まぁね」


実際に船に乗込んで、20分足らずである。



人口200人ほどの小さな島には、フェリーというものが運行していないので、自動車という物がない。


代わりにほぼ全世帯が漁師である為に、島民のほとんどの家に船があった。


定期便の船は運航しているが、一日に6本だけ。


ちなみに今、一同が乗っているのは、輝之が操船する成田家所有のプレジャーボートだった。



島にはもちろん大きなスーパーなどないから、

今日の夜と明日の朝の食材が、しっかりと買い込まれている。



これらもすべて輝之が段取りしていた。


お金持ちのお坊ちゃまでありながら、人当たりが良く爽やかで、

気が利いて卒がなく、誰からも好かれる完璧な男。



操船する輝之の横で、(ヒトミンって本当に当たりクジを引いたわよねぇ)と、由梨がその顔を見つめていた。