お前のすべてを愛してやる【完】

その時。



「あ、あんた。吊り革掴まってないと、また転ぶぞ?」



右上から声が聞こえた。



た・す・け・て…。



そう言いたいのに、言えない。



「ほらー、やっぱりわざとじゃんかー」



その隣ではずっと誤解している信と呼ばれていた彼の声。



「おい、聞いてんのかー?」



わたしが俯いているとまた右上から声がした。



見上げてもいいの?